三重・尾鷲へ、海と火と人情の旅へ――「尾鷲イタダキ市」と伝説の保存食「あぶり」を訪ねて
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皆さん、こんにちは!
本日は「遠くへ行きたい」の話題です。筆者の好きな番組のひとつです。
時々、遠くへ行きたくなることがありますよね。旅とグルメを兼ねて。そんなときに、とても重宝する番組でしょう。
「遠くへ行きたい」が連れて行ってくれた、知られざる港町
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テレビ朝日系の長寿旅番組「遠くへ行きたい」(2026年6月7日放送分)では、俳優・寺島進さんが登場です。向かった先は、三重県南部の港町・尾鷲(おわせ)。熊野灘に抱かれたこの町には、まだあまり知られていない魅力がたっぷりと詰まっています。
旬のとれたての魚を豪快に盛り込んだ「海鮮ちらし」、ブランド魚として近年脚光を浴びる「天然ブリ」、そして冷蔵庫がなかった時代から漁師町に伝わる保存食「あぶり」。番組を見ながら、思わず唾を飲んだ方も多いのではないでしょうか。
今回は、番組を通じて知った尾鷲の「食」の豊かさ、とりわけ「尾鷲イタダキ市」と「あぶり」について、じっくりとご紹介します。
尾鷲という町――雨と海と、豊饒な恵み
まず、尾鷲という土地について少し触れておきましょう。
三重県南部、東紀州地域のほぼ中央に位置する尾鷲市は、太平洋(熊野灘)に面したリアス式海岸の入り江の奥にある、風光明媚な港町です。「尾鷲の雨は下から降る」という言い回しがあるほど、全国でも有数の降水量を誇る地域として知られています。これは、沖合を流れる黒潮の影響により、年間を通じて暖かく湿った空気が陸地に押し寄せるためです。
その黒潮は、同時に豊富な海の幸ももたらします。ブリ、カツオ、マグロ、アジ、サバ、イワシ、イカ類、伊勢海老や深海魚まで――多種多様な魚介類が水揚げされる「魚のまち」として、尾鷲は地元の人々に誇りを持って語られてきました。
「尾鷲イタダキ市」とは――毎月第1土曜日の朝だけ開かれる、特別な青空市場
活気あふれる魚市場の朝市

写真引用:観光三重
尾鷲市の名物朝市として知られる「尾鷲イタダキ市」は、1月を除く毎月第1土曜日に、尾鷲漁協の魚市場を会場として開催される朝市です。開催時間は午前9時から午後1時まで(※当面の間、変更中の場合あり。お出かけ前に要確認)。
もともとの開催時間は8時半から12時半という設定でしたが、現在は少し遅らせた時間帯での運営となっています。12月は第1土曜日のほかに第3土曜日にも開催されるため、年末の贈り物探しにも使えるのが嬉しいところです。
何が買えるの?
市場に並ぶ品々は、まさに尾鷲の海と山の恵みのオールスターです。
水揚げされたばかりの新鮮な鮮魚、干物、農産物、惣菜、和菓子まで、尾鷲の特産品がイタダキ市特別価格でそろいます。刺身の盛り合わせは500円から伊勢海老・サザエ入りの豪華なものまでバリエーションも豊か。おにぎりや弁当、たこ焼きなどの屋台も出て、その場で食べ歩きを楽しむこともできます。
その場で地方発送のサービスも対応しているので、遠方からの来場者も安心してお土産を探せるのが好評です。
イベントも盛りだくさん
単なる物産市にとどまらないのが「イタダキ市」の魅力です。開催時期によっては、尾鷲節の和太鼓演奏などの演奏会や、お客さんが参加できるアトラクション、こどもたちのバザー、スピードくじなど、さまざまな催しが行われています。
また、「おわせ魚まつり」(三重県尾鷲市尾鷲港産地協議会主催)と同時開催になることもあり、その際には鮮魚の刺身試食やマグロの解体ショー、定置網漁業体験(事前予約制)なども楽しめます。家族みんなで1日過ごせる、賑やかなお祭り気分の朝市です。
アクセス情報
開催日時: 1月を除く毎月第1土曜日(12月は第1・第3土曜日) 開催時間: 9:00〜13:00(変更の場合あり) 会場: 尾鷲漁協魚市場(三重県尾鷲市) 問い合わせ: 0597-22-2611(尾鷲イタダキ市実行委員会・尾鷲商工会議所内)
公共交通機関をご利用の場合: JR紀勢本線「尾鷲駅」より徒歩約10分。
お車をご利用の場合: 紀勢自動車道「尾鷲北IC」より車で約5分、または熊野尾鷲道路「尾鷲南IC」より車で約10分。
駐車場: 尾鷲魚市場横に無料駐車場があります。
熊野灘の「天然ブリ」――春に輝く、知る人ぞ知る絶品魚
番組で寺島さんも堪能した「天然ブリ」についても触れておきたいと思います。
冬のブリは全国的に有名ですが、実は熊野灘の天然ブリが際立っておいしいのは「春」です。3月から5月にかけて、北の海でたっぷりと栄養を蓄えた大型のブリが、産卵のために熊野灘に来遊してきます。
地元・尾鷲市でフィッシュアナライザ(脂質含量計)を使って測定したところ、この時期のブリは脂のりが15パーセント以上を示す個体がほとんどで、中には30パーセント程度という驚異的な数値を示すものも漁獲されることがわかっています。スーパーで売られているブリとは一線を画す濃厚な味わいです。
明治16年(1883年)に発刊された三重県水産図解にも、熊野灘沿海が「鰤の漁村」として記されており、「3月から5月が良季で、また、味も美味しい」と当時の記録が伝えています。140年以上前から、この海のブリは格別だったのですね。
「出世魚」として縁起が良いブリにちなんで、尾鷲市では令和4年度から新規採用職員に旬のブリを贈呈するという粋な取り組みも行っています。
「梶賀のあぶり」――100年以上続く、漁師町の火と知恵の結晶
冷蔵庫がなかった時代の、逞しき知恵
番組の中でひときわ印象的だったのが、港町の保存食「サバのあぶり」ではないでしょうか。

「あぶり」とは、水揚げされたばかりの新鮮な小魚を、桜や樫の生木の煙でじっくりと燻製にした保存食のことです。尾鷲市の最南端に位置する小さな漁師町・梶賀町(かじかちょう)に、100年以上前から伝わる郷土の味です。
冷蔵技術がなかった時代、漁師たちにとって鮮度が落ちやすい小魚をいかに長持ちさせるかは、死活問題でした。そこで生まれたのが、燻製によって魚のうまみと保存性を同時に高めるこの製法です。親から子へ、子から孫へと、梶賀の家庭で大切に受け継がれてきました。
作り方――職人の手と、2時間の煙
あぶりの主役は、春先に水揚げされる体長10センチほどの小サバ(地元では「サバゴ」とも呼ばれます)です。春から初夏にかけて最盛期を迎え、小サバが水揚げされる6月いっぱいまで作り続けられます。魚の種類は季節によって変わり、夏はイサキ、秋は小カツオ、大サバやソウダカツオなども使われます。
作り方はこうです。まず、水揚げされたばかりの小サバの頭と内臓を1匹ずつ丁寧に手で外し、真水で洗います。次に塩をふって20分ほどおき、もう一度洗ってから、長さ30〜40センチほどの竹串に1本あたり12匹を串打ちしていきます。
そして、桜やカシの薪を燃やして発生させた煙の上で、きつね色になるまで1〜2時間、遠火でじっくりと燻していきます。大きな魚は2時間かかることも。火加減は職人が目で見て判断し、焦がさないよう細心の注意を払います。
仕上がったあぶりは、燻製特有の香ばしい風味としっとりとした歯ごたえが特徴。小さな魚なので骨まで柔らかく、丸ごと食べることができます。日本酒や焼酎との相性は抜群で、一度食べると後を引く美味しさだと評判です。
作り手は、梶賀のお母さんたち
長年にわたってあぶり作りを守ってきたのは、梶賀の地元のお母さんたちです。地元で20年以上前からあぶりを作り続ける浜中倫代さんのような方々が、今も丁寧に手作業で仕上げています。
梶賀町は人口200人にも満たない小さな漁師町で、高齢化も進んでいますが、2010年(平成22年)以降は地域おこし協力隊の力も借りながら、あぶりを特産品として本格的にブランド化。過疎化の進む町を活性化させる地域の誇りとして、今もその火は絶えることなく燃え続けています。
1串400円で販売されるあぶりは、ふるさと納税の返礼品としても人気が高く、全国からその味を求めるファンが増えています。
一見、干物に見えるけれど……
見た目は干物に似ていますが、実は全く異なる食べ物です。干物が乾燥によって水分を飛ばすのに対し、あぶりは煙の成分が魚に染み込むことで、独特の風味と旨みが生まれます。噛んだ瞬間に広がる燻製の香り、そしてギュッと凝縮した魚本来の甘みと旨み――これは梶賀の、そして尾鷲の火と知恵が生み出した、唯一無二の味といえるでしょう。
おわりに――旅は、知らない味との出会い
「遠くへ行きたい」という番組名には、日常から少し遠ざかり、知らなかった景色や味に出会いたいという、誰もが持つ素朴な願望が込められているように思います。
今回の尾鷲の旅は、まさにそんな旅の醍醐味を凝縮したものでした。毎月たった一度、土曜日の朝だけ開かれるイタダキ市の活気。140年以上の歴史が証明する天然ブリの絶品の味。そして、冷蔵庫もなかった時代から続く、梶賀のお母さんたちの手仕事が生み出す「あぶり」の深い香り。
どれひとつとっても、わざわざ行く価値がある。そう確信させてくれる旅の内容でした。
機会があればぜひ、毎月第1土曜日の朝に尾鷲へ。魚市場に漂う海の香りと、桜の薪の煙の香りを、全身で受け止めてみてください。
【基本情報】尾鷲イタダキ市
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 1月を除く毎月第1土曜日(12月は第1・第3土曜日も) |
| 時間 | 9:00〜13:00 ※変更あり、要確認 |
| 会場 | 尾鷲漁協魚市場(三重県尾鷲市) |
| 駐車場 | 魚市場横に無料あり |
| アクセス(電車) | JR尾鷲駅より徒歩約10分 |
| アクセス(車) | 尾鷲北ICより約5分 / 尾鷲南ICより約10分 |
| 問い合わせ | 0597-22-2611(尾鷲商工会議所内) |
| 公式サイト | https://www.city.owase.lg.jp/0000015417.html |


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