93歳のユーチューバー「チロちゃんばあちゃん」が大人気! 登録者22万人超、総再生回数2億3千万回の秘密とは?
高知県のとある山あいの家から、毎日のように動画が発信されています。主役は御年93歳の「チロちゃんばあちゃん」。大根を切り、タケノコの皮をむき、カツオのたたきをふるまう――ただそれだけの映像が、世界中の人の胸を打ち、気づけばユーチューブ登録者数は22万人超、動画の総再生回数は約2億3千万回という驚異的な数字を記録しています。
いったい、この人気の正体は何なのでしょうか? 今回は「チロちゃん」チャンネルの魅力を、たっぷりとご紹介します。
チロちゃんばあちゃんって、どんな人?
チロちゃんばあちゃんは、1932年(昭和7年)、高知県内の山間部に生まれました。現在93歳。本名は非公表ですが、チャンネル名にもなっている「チロちゃん」とは、撮影担当の孫娘のことで、ばあちゃんはその愛称でも親しまれています。
実家は大きな農家で、きょうだいは6人。子守りや手伝いの人もいるにぎやかな家庭で育ちました。しかし幼少期は戦時中と重なり、学校の書道では清書以外は新聞紙を使っていたといいます。高知大空襲の夜の赤く燃える空、玉音放送で流れた昭和天皇の声――そういった記憶を今も鮮明に持っています。
戦後は愛媛県のおばの家で花嫁修業を積み、高知県内の洋裁店に就職。その後、県内の男性と結婚して2人の子どもを育て上げました。現在は夫に先立たれ、孫のチロちゃんと2人で暮らしています。
そんなばあちゃんが今、ユーチューバーとして輝いているのです。
実は筆者の田舎は高知県。ですから、よけいにこのばあちゃんのことが気になったんですよ。
チャンネル誕生のきっかけは「かさばらないアルバム」
「チロちゃん」チャンネルがスタートしたのは、今から約10年前のこと。当時はまだ「ユーチューバー」という言葉すら一般に浸透していませんでした。
動画を撮り始めたのは孫のチロちゃん。きっかけは「思い出として日常を残しておきたい。後々に宝になるはず」という気持ちからでした。撮った動画をユーチューブに投稿したのも「アクセスすればいつでも見返せる。かさばらないアルバムのつもりでした」という、ごくシンプルな理由です。
バズらせよう、有名になろう、という野心は一切ありませんでした。ただ、ばあちゃんの日常を記録しておきたかった。その純粋な思いが、結果として多くの人の心を動かすことになったのです。
350万回再生! 「空っぽのお弁当箱」の動画が象徴するもの
チャンネルがじわじわと注目を集める中、ひとつの動画が大きく話題になりました。2019年に投稿された、1分半にも満たない短い動画です。
内容はこうです――ばあちゃんが一生懸命作ったお弁当を、チロちゃんが完食して帰宅。その空っぽになったお弁当箱を、ばあちゃんがそっといとおしそうに見つめる。ただそれだけです。
それだけなのに、現在この動画は約350万回近く再生されています。コメント欄には「なんかわかんないけど涙出てきたわ。おばあちゃん長生きしてね」「こーゆうの見るとばあちゃんに会いたくなる」といった声が1200件以上寄せられています。
なぜこんなにも響くのでしょうか。それはきっと、この動画が「愛情」というものを言葉ではなく、行為と表情で見せているからではないでしょうか。ばあちゃんのまなざしに、何十年もかけて積み重ねてきた人生の厚みが宿っている。それが、見る人の奥深いところにそっと触れるのだと思います。
チロちゃんばあちゃんの料理は、なぜ見ていて心地よいのか
チャンネルの中心コンテンツは、ばあちゃんの料理です。タケノコの下処理、カツオのたたき、弁当作り……高知の豊かな食材を使った、素朴で丁寧な料理の数々が動画に収められています。
派手な演出は何もありません。BGMは台所の音、包丁の音、火の音。ばあちゃんの手が、ゆっくりと確実に食材を扱っていきます。その手の動きに、長年培われた経験と知恵が自然ににじみ出ています。
ばあちゃん自身は「料理に自信はないですよー」と笑いますが、花嫁修業時代に厳しく仕込まれた腕前は確かなもの。でも、その「自信がない」という言葉こそが、また視聴者の親しみを呼ぶのでしょう。完璧を装わない、飾らないばあちゃんの姿が、「どこかのおばあちゃん」であり「自分のおばあちゃん」に重なるのです。
撮影中には、米ぬかが見つからなくてチロちゃんに叱られるひとコマも。「もう…。やき、どこでも置いたらいかんて言うたろう!」。そんなやりとりも編集でカットせず、そのまま届ける。その”生活感”こそが、このチャンネルの大きな武器です。
TikTok生配信にも挑戦! デジタルを怖がらない姿勢
驚くことに、ばあちゃんの活動はユーチューブだけにとどまりません。週末にはTikTok(ティックトック)の生配信にも挑戦しており、そちらでも登録者が約4万人います。
93歳でTikTokの生配信。このことだけでも、ばあちゃんのチャレンジ精神は十分伝わります。ただ、ばあちゃん自身はSNSの仕組みをよく分かっているわけではないようです。それでも「感謝の気持ちでいっぱい。長生きの秘訣になっちょって、今が一番幸せ」と話す表情は、本当に幸せそうです。
長生きの秘訣が「ユーチューブ」というのは笑えますが、実は的を射ているかもしれません。誰かに喜んでもらえる。自分の日常が価値を持つ。そういった実感が、生きる張り合いになっているのでしょう。
高齢ユーチューバーが輝く理由――「飾らない日常」の力
近年、チロちゃんばあちゃんに限らず、高齢のユーチューバーが注目を集めるケースが増えています。奇抜なことをするわけでも、スキルを披露するわけでもない。ただ、ありふれた日常を、飾らずに発信する。それだけなのに、多くの人が見てしまう。
その理由は、現代社会の「疲れ」と関係しているかもしれません。SNSには加工された写真、盛られたライフスタイル、過剰な演出があふれています。そんな中で、本物の「日常」を見せてくれるコンテンツは、心の安らぎになります。
しかも高齢者の日常には、長い人生から滲み出る「深み」があります。一つひとつの動作に、生きてきた歴史が宿っている。タケノコを剥くばあちゃんの手は、ただの手ではなく、戦争を経験し、家族を育て、時代を生き抜いてきた手なのです。
孫のチロちゃんは言います。「動画を通じて、ありきたりな日常が尊くて大事だということを知ってほしい」と。この言葉が、チャンネルのすべてを物語っています。
まとめ――93歳のばあちゃんが教えてくれること
チロちゃんばあちゃんのユーチューブは、「特別なこと」を何もしていません。料理をして、孫に叱られて、カツオのたたきを笑顔で差し出す。それだけです。
でも、その「それだけ」が2億3千万回も再生されている。これは、私たちが日頃どれほど「飾らない本物」に飢えているかを示していると思います。
93歳のばあちゃんが、スマホも自分では操れないままに、世界中の人の心を動かし続けている。これほど痛快で、温かく、勇気をもらえる話はなかなかありません。
ぜひ一度、「チロちゃん」チャンネルを覗いてみてください。きっと、あなたも誰かのことを思い出すはずです。
参考:高知新聞(2026年4月20日)

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